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モータージャーナリスト先川知香さんが観たiBのほんとうの姿

 
 
2020.05.26

 先川知香さんが観たiBのほんとうの姿  第3回

未来志向の内燃機屋さん「井上ボーリング」では、いったいどのような人たちが、どんな仕事をしているのでしょうか。実際に、インタビューをさせて頂きました。
 
インタビュー3人目は、チーフフロントの秋場 久留実さんです。

チーフフロント 秋場 久留実(あきば くるみ)さん



さっぱりとした姉御系、頼りになるお姉さん。 秋場さんの前職は、製造系メーカーの事務職でした。
 
結婚後、出産のために退職し、再び正社員での雇用を求めてハローワークに相談に行ったところ、幼い子供がいるお母さんを雇ってくれる正社員の求人はほとんど無いという現実を知らされます。
 
どうしても正社員として働きたかった秋場さんは、その状況に諦めることなく応募し続け、 1 次選考、 2 次選考と進んでいくも、どの会社も最終選考で、幼い子供の存在がネックとなり、採用を見送られたそうです。
 
幼い子供がいると、何かあればお母さんになる。そんな当たり前のことが理由で、なかなか就職先が決まらないなか、井上ボーリングの求人を発見。「きっとダメだろうな・・・。」と思いつつも面接を受けたところ、無事採用となりました。

 
井上ボーリングの面接では結婚や子供についての質問は一切なく、不安になった秋場さんは出社初日、恐る恐る「私、子供がいるんですけど」と、打ち明けたそう。しかし、井上社長の答えは「ああ、そうなんだ。」の一言。子供がいることなど一切気にしていない社長の様子に、秋場さんの不安は一瞬で吹き飛んだそうです。
 
秋場さんの話を聞いて驚いたのは、家族構成を理由に採用結果を左右するという社会の現実でした。
 
誰もが自分を含めた家族との生活のために働いているはずなのに、その家族が不採用の理由になるという矛盾。会社のためには頑張ってほしいけど、社員のためには一切の融通も利かせたくない。そんな会社が多いのだということに、大きな衝撃を受けました。
 
「だから私、雇ってもらえたことにすごく感謝しているんです。」
 

 
そんな秋場さんの現在の業務は、チーフフロント。全国から届く荷物を開封し、 1 1 点確認して受注する。そして、工場の担当部署にその荷物を運んだり、出来上がった製品を回収し、依頼者に発送するなどの業務を担当しています。
 
また、最近では経理業務も勉強中 ! 元々、バイクについての知識は全くなく、求人を見つけた頃はボーリング場の事務を募集しているのだと思っていた秋場さんは入社後、知識を深めるためにモンキーを自分でレストアした程の勉強家。
 
今では、井上ボーリングの全ての工程を理解し、依頼に対しての見積もりなども誰よりも早く的確に出せるそうです。
 
さらに、井上ボーリングが参戦するバイクレースやイベントではレースクイーンやモデルとしても大活躍 ! 会社の顔として、PR業務までこなす万能ぶりを発揮しています。
 

 
井上ボーリングはどこにも負けない技術と古いオートバイの世界がどうあるべきかという理想を持って仕事をしている会社。しかし、かなりニッチで、いったいどんなことが出来るのか、オートバイのライトユーザーには伝わりにくいという難点があるのも事実です。
 
そんな井上ボーリングがユーザーに高度な技術を提供することで叶えたい想いや世界観などを、 PR 活動でうまく伝えていけるかどうか。ただ、古いオートバイを直すだけではない、その先にある価値をどういう形で表現すれば多くの人に伝わるのかなど、秋場さんは自身が会社の顔となって最前面で活動することで、その間口を広げるための試行錯誤を日々続けているのです。
 
「入社して、結構最初の段階から決めていたのは、現在のチーフフロントの仕事を極めることに加えて、会社の経理まですべてこなせる立場になりたい。それが、今の目標です。」
 
 

 

文/モータージャーナリスト 先川 知香