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モータージャーナリスト先川知香さんが観たiBのほんとうの姿

 
 
2020.05.12

 先川知香さんが観たiBのほんとうの姿  第1回

未来志向の内燃機屋さん「井上ボーリング」では、いったいどのような人たちが、どんな仕事をしているのでしょうか。実際に、インタビューをさせて頂きました。
 
 

製造開発部長 小林 丈晃(こばやし ひろみつ)さん



第一印象は、少し強面。話してみると、笑顔が優しい小林さんは、元々、 TV の照明技師をしていたそうです。その期間、なんと 12 年!
 
新卒で入社をしてからずっと、ドラマや VP (ビデオパッケージ)での照明を担当していたとのことで、内燃機とはまったく関係のない業界からの飛び入り転職。
 
そんな小林さんが井上ボーリングで働くきっかけとなったのは、 34 歳の時に雑誌「 moto メンテナンス」で見つけた求人広告でした。
 
以前からオートバイが趣味だった小林さんは、井上ボーリングのような内燃機屋さんに度々、仕事を依頼していて、内燃機屋の仕事に興味があったこと、そして井上ボーリングの名前を知っていたこともあり、転職を決意したそうです。
 
とは言っても、元々照明の仕事を辞めようと思っていた訳ではないそうで、求人広告を見つけていなければ、今でも照明の仕事を続けていたかもしれないというのだから、不思議な縁を感じます。

 
そんな小林さんが持つ、井上ボーリングという会社のイメージは、『いい意味で、砕けている会社』。
 
「お客さんとして、何度か同業他社に仕事を依頼したことがあるのですが、結構怒られるんですよね。お客さんなのに(笑)。
そういう業界なんですよ。怖いおっちゃんが出てきて、『めんどくさいこと頼みに来やがって。やってやるよ。』くらいの感覚で仕事を請け負ってる。
だから、僕にとって内燃機屋はそういうイメージになっていたのですが、それが井上ボーリングにはなくて。入社した当時は、新鮮でした。」
 
この話を聞いて、「確かに!」と、共感した人は多いのではないでしょうか。
私も、バイク業界に限らず、職人さんというと少し気難しいイメージがあったので、井上ボーリングを知ったときは、社長をはじめ社員のみなさんのアットホームな印象に、かなりの驚きと安心感を感じた事を覚えています。
 

 
現在の、小林さんの仕事は製造開発部長。これまでにも様々な新サービスを生み出していて、最近では、 NSR のセンターシールが抜けてしまうという欠点を克服し、永遠に抜けない『ラビリンスシール』を開発したそうです。
 
この、『永遠に抜けない NSR のセンターシール構想』は、小林さんがまだ趣味でバイクをいじっていた時代から漠然と描いていたそうで、実際に井上ボーリングの掲示板に書き込んだこともあったそう。
 
そんな、プロとしての発想ではなく、ひとりのバイク好きの漠然としたアイデアを、製品化してしまうのも、井上ボーリングならでは。バイク好きが集まっている会社なので、バイク好き = お客さんの一番欲しいものが、手に取るようにわかるため、その開発には労力を惜しみません。
 
現場では、クランクの OH を担当。古いオートバイのクランクシャフトのベアリングなど、消耗品を交換し、再度組み立てなおして芯を出すというのが主な作業内容です。
 
工業製品は、厳密に見ると1つ1つが少しずつ違っているため、同じ作業をするにもその個体差により正解は様々。そんな答えを導き出していく事に面白さや大変さ、やりがいを感じているそうです。
 
 

 

文/モータージャーナリスト 先川 知香