How to MAKE The First Tantrum
初めてのタントラム 3  

画像の入手ができたので、続きを始めます。
写真は全て肉丸クンこと佐藤勝之さんが昨年5月SOTARO'sでジョニー・キングを呼んだ時に撮影してくれたものです。
それでは、まずいろんな分析をする前に、ジョニーの写真を見ながら、タントラムをやる手順をみてみましょう。

タントラムのシークェンス

Approach

まず、アプローチに向かう前にウェイクを出たら、かなり思い切ってワイドな位置までカットアウトしていきましょう。どの辺まででたらいいのか、ですが、これは自分が安定して楽に出ていける範囲で、極力ワイドな位置ということにしましょう。いつもだいたい同じ幅をでられるようにした方がいいと思うんです。あまり自分のエッジングの限界まで出ていくと、そのときどきで出方が変わってしまうと思います。ですから、安定して出ていける範囲でなるべく外へ、ということになります。
バックロールでは最後のリープする瞬間の加速を大事にするためにショートアプローチの練習をしましたが、タントラムでは逆にワイドアプローチです。その理由は最初の回に書いた通り、僕の考えではタントラムではエッジを戻しボードをフラットにし、ボードの向きを変えてから飛ぶ必要があると思うからです。ボーダーはボートと引き合って加速をするのをやめた瞬間から、減速していきます。つまりエッジを戻してボードの向きを変えている間にも横行きのスピードを失ってしまうのです。そのために、その前の時点で十分に加速して、ウェイクを飛び越すのに十分なビッグなエアーを得られるだけのスピードを得ておく必要があるんです。これが、タントラムではワイドアプローチを行わなくてはならない理由です。
十分にワイドな位置へ出たら、ここであわてないことがいいエッジングをするために、とても重要です。

外へ向かってのエッジングをやめたら、そのままなにもせずずーっと待っていてください。待っていると、次第にボードがスピードを失って沈んできます。それでも、まだそのまま待っていてください。そうすると、「こんなに遅くても滑っていられるんだ!」と驚くほどゆっくりになっても、板は結構走っています。この状態からゆっくりとボードを回し込むんです。こうすると、ボードが沈んで、深く水に食い込んでいるので、ほんとうに深いエッジングが可能になります。スピードに乗ってピュンとワイドに出るば出るほど、待っている時間も長くなります。ながーくボートに引かれもせず、滑っていられることを、楽しんでください。ジョニーのボードが深く深く水をえぐっているのがわかると思います。そして、ボードがすごく立っていますよね。これがエッジングの目標です。
このような深いエッジをたてまま、上半身を垂直に保ち、加速を続けます。ボードのスピードはどんなに深く立てても、一瞬ではたいしてスピードが乗りません。長く引けば引くほど、ぐんぐんスピードが乗ってきます。ちょうどこのジョニーに写真のポジションのまま、長くキープするようにします。はじめはこの加速とただの2ウェイクジャンプだけの練習も十分行った方がいいでしょう。ワイドアプローチからスピードをのせて、しかもウェイクにヒットする瞬間は体を起こし、全身を垂直にして、ボードをフラットにして飛ぶ練習をします。今までにないビッグエアーができるまで練習します。ボードをフラットにすることばかり考えていると、十分に加速する前にボードをフラットにしてしまいます。これでは十分なスピードが得られないので、ウェイクの直前までは加速を続けるようにします。


Switch or One-Motion


ウェイクに近づいたところで、ボードをフラットにします。ふたつの方法=スイッチ/ワンモーションのどちらの方法でタントラムをするにしても、ボードはフラットであるべきだ、というのが僕の考えです。ウェイクボードマガジンの98年4月号ではこのどちらでもない、エッジをたてたショートアプローチのタントラムについても紹介されていますが、これには僕は反対です。その理由は別の章でじっくり検討したいと思います。ここでは僕の考える安全なタントラムの方法で話を進めます。ジョニーのタントラムは僕の言うふたつの方法のウチでは、ワンモーションのタントラムに属すると思います。ボードをフラットにしてから、ボードの方向を回すというような動きはほとんどなく、そのまま体だけが方向を変えて伸び上がっていきます。それでも、ロールの時などにくらべると、ウェイクに当たるときには体がほぼ垂直に起きてもうボートと引っ張り合ってはいないことが、この写真でもはっきりわかると思います。ですけれでもジョニーの場合はわずかにエッジが残っているようです。それがわかるのは実は3枚目の写真です。エッジが残っていると、飛び出しでボードの前があがって縦になってしまう度合いが強いんです。フラットで入ると、前があがりません。
スイッチするタイプのタントラムではワンモーションの場合よりは早めにボードをフラットにし、後ろの手を離します。そして肩をウェイクと平行にしてタイミングを待つ間にボードもウェイクと平行になる方向へ回ってきます。十分に待ってウェイクのリフトを感じてから真上に伸び上がるようにします。
ワンモーションの場合は、ウェイクの直前まではエッジをたてたまま入っていき、ウェイクにヒットするときに体を起こし片手を離しながら、肩をウェイクと平行に向けつつ伸び上がります。このときに上半身を激しく動かすと、その慣性で空中で体がリバート方向へひねれていってしまいます。ワンモーションの難しい点はここだと思います。ふたつのやり方の長所短所をまとめると、

スイッチ=より安全だが、タイミングがむずかしくなり、とびにくい
ワンモーション=飛びやすく大きなタントラムができるが、リバートしやすい


ということになると思います。

The instant of LEAP


どんなトリックでも一緒なんですが、伸び上がるときに重要なことは方向とタイミングです。方向は真上に、タイミングは早くならないように。これは全てのトリックで共通ですね。だけど、これができないんだ。高くジャンプをするためには、どんなトリックでもこの瞬間だけは体が真上に伸び上がっていかなくてはならない、ということは絶対に必要なことなんですね。これができれば、滞空時間が伸びて大きなジャンプができるからどんなトリックでも簡単になるわけです。では、タントラムの場合にはどのような意識で飛べばいいかというと、後ろへ回ろうという意識をなるべく持たないようにします。タントラムではたいていの場合、回ろうとして、背中の方に倒れた方向で飛び出してしまうようです。伸び上がるときには空を見て、まっすぐ真上に飛び上がるようにします。そうすると、回転は自然におこります。体を背中の方へ大きくそるようなタントラムをする人もいてかっこいいですけど、とにかく最初はまっすぐ体を真上に伸ばしてみましょう。ちなみにジョニーのこの写真はインディータントラムなので、普通のタントラムに比べると少し後ろに伸び上がっているように見えます。ボードをつかみにいくためにはボードが体の前に跳ね上げられなくてはならないからだと思います。

In The AIR


さて、うまく真上に伸び上がって、タイミングも早すぎず、大きな足応えがあったとしら、それは大きなタントラムになります。このような飛び出しができれば、空中では特になにもやることはありません。というよりも、なかなかなにかできる余裕はないと思います。この空中では、大きく背中の方へのけぞるようなタントラムをやる人もいれば、逆にインディーのタントラムみたいに体が曲がったまま回っていく人もいます。またまっすぐに体が伸びている人もいます。ここらへんはその人なりの回転を得る方法がいろいろある、ということだと僕は思っています。ロールの場合はボードの加速を使って回るのが基本だと思うのですが、タントラムの場合はフラットなボードで飛び出して行くわけですから、回転の力はライダーが何らかの方法で力を与えているということになります。そのような理由でタントラムの空中でのスタイルは人によってさまざまなのだと思います。背中へ大きくそる人は上半身を先行させることでその力を得ています。体がまっすぐな人は飛び出しの瞬間の力の方向が回転を与えるような方向に飛び出しているのでしょう。上半身をインディーのように曲げている人は飛び出す時の方向と、空中で上半身の回転をあえて止めることで下半身が追いついてくるように体を使っているのでしょう。これは自分でトライしてみると自然にいずれかの方法で回転していきます。いずれの方法でも回転が十分に得られないということで心配をする必要はありません。普通は回ろうとしすぎることが一番の問題になります。むしろ、回転を意識せず、真上に伸びあがり、高いタントラムをめざすことこそが、成功への近道です。どのタイプで回転するかは、それこそライダーの個性=スタイルなのではないでしょうか。

Landing


回転の後半では自然に水面が視界に入ってきます。ここで、意識すべきことはハンドルを持った腕の引きつけです。タントラムの成功について、この着水時の腕の引きつけができるかどうかが大きなポイントになります。まず第一に腕を引きつけることによって空中での体の回転を助けてやることができます。あと少しで回りきって成功しそうだ、という時には特に役にたつでしょう。また、タントラムは片手でやりますので、着水の衝撃にも片手で耐えなければなりません。そのときに腕が引き延ばされていたのでは、この大きな衝撃に耐えることができません。腕を引き付けておけば、腕をショックアブソーバーのように使って耐えることができると言うわけです。









Cases of Falling


着水の衝撃は他のインバーティッドトリックに比べても大きい方だと思います。ロールでは着水したあと、ボードが走っていくような着水の仕方=回転方向なのですが、タントラムでは逆に、足とボードが水面にたたきつけられるような方向なので、衝撃が大きくなります。足首や膝への衝撃が大きいので、膝を柔らかく使って衝撃を吸収する必要があります。
空中では早く水面を発見すると同時に、着水の時には顔を上げてボートの方を見られるようだと、着水が安定します。
着水の時の状態として、いろいろなケースがあります。
1. 回転が足らず、爪先側のエッジからボードが刺さっていく場合。
2. 後ろ足一本に大きな衝撃があって、こらえられない。
3. ボードがリバート方向へ回ってしまう。
4. 回りすぎて後ろへ転んでしまう。
などが代表的な例だと思います。これらの対策については、また次回以降でまとめたいと思います。

シーズンに入ってしまって、なかなか書く時間がとれません。お待たせしてすいません。
98.3/30


Sotaro Inoue
井上 壮太郎
SOTAROS@ocean.or.jp
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