Midship sports on the Water
とても小型で軽量なのに、大パワーのエンジンをミッドシップに積んだ船内機仕様のスキーボート。水の上のスーパー7のようなスキーボートたちはじつに爽快な走行性を誇っている。気軽に楽しめるスポーツマシンだ。
水の上には専用のスキーボートをおいて誰がなんと言おうと、週末には水の上で過ごしたい。透明な水の上に小さなボートを浮かべて、フラットな水面を思いきり飛ばして誰も知らない奥まった入江に滑り込む。キーを抜いてアンカリングしてしまえば、そこは静寂の世界だ。煩わしい日常から遠く離れて、まどろみのときを過ごすもよし、清冽な水に体を委ねてスウィミングするもよし、退屈すれば、思いきりアクティブにウォータースキーに興じることができる。こんな水の上の週末に相応しいのはなんと言っても、スキーボートだ。クルーザーなどはにあわない。せっかくの日差しを存分に楽しむのに鬱陶しい屋根やキャビンなどは無用のものだ。軽快な操縦性。素晴らしいスロットルレスポンスと加速。軽いステアリング。まるで手軽なライトウエイトスポーツカーを操るように、思いのままに振り回すことができる小さくパワフルなスキーボート。水の上で遊ぶための道具として、これに勝るものはない。スキーボートの特徴スキーボートはウォータースキーを思いきり楽しめるように、様々な工夫の施された専用のボートだ。基本性能の向上のためにもっとも重要なことは軽量化だ。このためにスキーボートは艇体の材質、形状を吟味して入念にデザインされている。その中でも最も軽量化に資するのはエンジンのレイアウトだ。主なスキーボートがインボードのエンジン形式をとっているのも、実はこのためなのだ。スタンドライブではドライブユニットを必要とするために、その分だけの重量増加を避けることができない。19FT程度の小さな艇体でインボードにエンジンを積むというこのスキーボート特有のレイアウトを採用したことが、モーターボートの新しい可能性を引き出すことになった。スターンに船外機やドライブユニットのようなものが何もないので、水の中へのエントリーがじつに快適にできる。正にスキーボートは、水に触れて遊ぶというモーターボートの本質的な魅力に溢れているのだ。また、ボートの構成部分の中で最も重いエンジンをミッドシップに積んだことで、ヨー方向のモーメントを最小限にすることができた。おかげでスキーボートは素晴らしい旋回性能を持っているのだ。大きなパワーを上手に操れば、ジェットビークルみたいなスピンターンだって可能なのだ。ステアリングはドライブユニットを介さず直接ラダーを回すだけなので、とても軽い。俊敏なスロットルレスポンスとあいまって、長時間のドライビングでもドライバーを疲れさせない。インボードというエンジンのレイアウトが上記のような様々なスキーボートの特徴を作り出しているのだ。スキーボートとしての使いよさを高めるために左の図のような様々なアコモデーションがある。それぞれウォータースキーを楽しむためには重要な装備ばかりだが、これらはランナバウトとして走るときにもスキーボートを快適なものにしてくれている。正確な2連装備のスピードメーターや視認性の高い大きなスキーミラーも扱いやすさを高めている。本当にボートを愛する人のためにボートを持つ理由というのは人それぞれでいろんなケースがあっていいと思う。海釣りが好きならそれなりのボートがあるだろうし、外洋へ出ていきたければ大きなボートが必要だろう。だが、例えば、湖や内海の静かな入江で水と親しむのが目的ならば、やはりそれに相応しいボートというものがある。個人でボートを所有し楽しむのなら、自分で管理ができるような小さなボートがいいと思う。整備もマリーナまかせでなく、面倒を見てやれるようなボート。その点スキーボートはメカニズム的にも実にシンプルなのでエンジンさえわかれば、他にはなにもないようなものだ。故障もそれだけ少ない。一般的なランナバウトではものたりない、プラスアルファの魅力を求めたい、本当にボートが好きな人たちのためにスキーボートはぴったりのボートだ。もう一つ付け加えておくとすれば、スィムウエアーを着けた女性をのせてこれほど似合うボートも他にはないだろうということだ。Sotaro Inoue
井上壮太郎
SOTAROS@ocean.or.jp戻る