
2025.05/11
【他にはないオートバイの愉しみ方】
text & photos : Sotaro Inoue(President of iB)
今回はiB井上が考える自分にとって本当に愉しいオートバイの所有の仕方、乗り方、愉しみ方に関わるお話です。

まあ、自分は多くのオートバイ乗りのかたに比べるとかなり変わった偏った考えの持ち主だ、という自覚はあります。なので、その分はそうとう差し引いて読んでいただきたいと思います。

一番はオートバイの速さに自分は魅力を感じないということだと思います。
この理由はあちこちで繰り返し述べているので端折りますが、とにかく現代・21世紀になってまだ乗り物の速さに価値があると考えるのは全くおかしなことだ、というのは間違いないと思っています。
20世紀の中盤ぐらいまでは価値があったことを全面的に認めますけど、それ以降はもうは速さに意味はなくなっていると思います。
それは単に考え方としてそうだというだけでなく、僕自身は実際にオートバイに乗っても、あまりにスピードを出して走ることを楽しいとも気持ちいいともどういうわけか感じないんです。
その気持ちはレースに出場し、サーキットを走ってみてさらに確信に変わりました。

サーキットでは常に最高に速く走ることを求められます。あの場所での唯一の価値が速さなので、それは当然のことです。
実は僕も公道を制限速度を守って走ることには、多少抵抗がありました。スピード違反で捕まってしまったこともあります。なので、もしかしたら自分もスピードが好きなのかな、と思っていました。でも、それはあまりにも安全のみに重きを置きすぎた制限速度の設定よりはもうほんの少しだけ、自分の好きな速度で走りたかっただけだった、ということがサーキットを走ってみて、とてもよくわかりました。
サーキットで常に最高に速く走ることを求められるのなんて、制限速度で走ることに比べても遥かに不自由で、鬱陶しくて、危なくて、怖くて、少しも愉しいことではありません。自分の好きなスピードで走る自由なんて全くありません。そんなの、誰だって嫌ですよね。オートバイは自由の象徴だというのに、サーキットには全く自由がありません。同じところを同じ方向に全力で走ることしか許されないんです。いくら頑張って走っても、同じところをくるくる回っているだけでどこにも辿り着きません。
(レースが好きな方々、本当にすいません。)
もちろん、それを競技として愉しむ、ということには別の意義も楽しさもある、ということは僕だって理解しています。やはり表彰台に立って、みんなに祝ってもらうのは楽しいことでした。でも、だからと言ってサーキット以外を走るオートバイなどの乗り物全般にまで敷衍して速さを唯一の価値としてありがたがるようなことではない、と僕は思っています。

サーキットを走るロードレースに限らず、モータースポーツの大部分は速さを競うものになっています。モトクロスもエンデューロもスーパーモトもダートトラックも思いつく競技はみんなレース=速さを競うものではないでしょうか。
ところが、ここに速さを競わないモータースポーツがあります。
それが今回iB Lady RIHOさんと一緒にEX全日本レディースチャンピオンの小玉絵里加さんのスクールで教えてもらった「トライアル」です。

ここであらためてトライアルの説明は必要ないでしょうが、一言で言えば、障害のあるセクションを足をつかずにバランスをとって乗り越えていけるかを競う競技になっていて、速さは求められません。(制限時間がある場合もあるようですが早い方が偉いわけではない。)競技としての優劣はバランスを崩して足をついた回数で測られます。
これが本当に愉しいんです。なぜか競技者同士が、お互いになんとか障害を乗り越えられるように
応援しあっているような和気藹々とした雰囲気に満ちています。もちろん真剣な競技になればそんなことを言っていられないでしょうが、少なくてもアマチュアの趣味の大会ではいつもそんな愉しさが感じられます。これは他の競技にはないトライアルの特色だと思います。

その愉しいトライアルのスクールにご覧の通りの美しいiB Lady RIHOさんと参加して、しかも教えてくれるのはこれまたなんとも可愛くて素敵な小玉絵里加先生ですからね。たまりません。絵里加スクールはいつも多くのリピーターを含むエントリーですぐに満員御礼になってしまうというのも当然ですね。

後援しているのはBG誌。BG誌は小型のバイクの楽しみ方を提案するとともに、絵里加さんを応援し、またトライアルの普及にも一役買おうしているようです。素晴らしい。読者とこのような接点を持って雑誌を出版していくポリシーある姿勢は本当に尊敬できます。
今回僕はBULTACO SherpaTではなく、HONDA IHATOVOを持ち込んでみました。自分はトライアルバイクを街乗りするのも大好きですし、そんなトライアルバイクだけでも4台ほど所有しています。
比較的入手しやすく、シンプルでいじりがいのあるトライアルバイクは、所有して愉しむにもとてもいいと思います。あの細くてクラシックなヴィンテージトライアルバイクはとてもカッコいいとも思います。
絵里加スクールは本当にトライアルのビギナーを大切に育ててくれるスクールになっています。毎回スクールのスタートは1番の基本であるスタンディングスティルから。そしてマーカーを置いて小さなターンからフロントアップの練習と続きます。お昼になるまで、みっちりと基礎の練習。
午後はU字溝を積んだセクションなどをやって最後にみんなで斜面の上り下りと少し経験のある人は丸太を超えることも選べるセクションで1日の総集編をやります。
みんなが見ている中でのセクションはドキドキわくわく。絵里加先生からのアドバイスをラウドスピーカーで受けながらのトライになります。クリーンできれば最高の気分です。
本当にオートバイにはこんな素敵な楽しみ方があるよ!ってみんなに教えたくなります。オートバイをコントロールする方法がわかります。スロットル・クラッチ・ブレーキの操作とステップでのバランスの取り方。それらが一体となってうまくコントロールできれば、歩いていくのも困難な不整地の坂道でも登れるし、降りられるし、自在にルートを選んで曲がり、障害を乗り越えて走って行けるようになるんです。
そこには自由がいっぱいです。行けない道などありません。どんな障害からも重力からも自由になってオートバイと一緒に乗り越えて行けるようになるんですものね。
こういうライディングができれば、公道を走っていても「速く走れないとカッコ悪い」などと考える必要もなくなります。
速さなどに縛られない、まさに自由の象徴としてのオートバイのあり方がトライアルライディングにあると言えるのではないでしょうか。

(これは全くの蛇足ですが、自分の好きな水上スキーもウェイクボードもエンジンを使いますが、速さを競うスポーツではありません。)
当日の様子についてはぜひ下の動画もご覧いただければと思います。
絵里加スクール動画
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