
2024.11.5~12.11
【3Dプリンターによるシリンダー製作】
text & photos : Sotaro Inoue(President of iB) + Tomonari Nibe (M.C.C.)
何にもないところから、3Dのデータだけを頼りに金属3Dプリンターでシリンダーを作ってしまう。
本当にそんなことができる時代になってしまいました。

10年前だったらただの夢のような話です。樹脂の3Dプリンターが登場して、いずれは金属もこんなふうにできる時代が来るんじゃないの?!
なんて話していたことが、本当にもうできてしまいました。
鋳物の型を作る必要もなく、製品を大量に作る必要もなく、ただの一個からでも鋳物以上の精度と強度を持ったシリンダーがカタチになってしまうんです。
今回iBはKAWASAKI トリプル マッハ750cc (H2)の製作をやらせてもらいました。実は以前にiBは削り出しでH2シリンダーをアルミの塊から削り出しで製作、販売した実績があります。
その時の3Dデータをそのまま今回の3Dプリンターでの挑戦に利用することができたんです。
2024年の11月にビッグサイトで行われたJIMTOF(国際工作機械見本市)に非鉄金属商社で3Dプリンターの輸入もされているDOHO様のブースでシリンダーの展示をさせていただきました。
DOHO様取り扱いの3DプリンターはZRapidという機種で今世界で一番売れているという金属3Dプリンターです。
坂戸のマッハ専門店スピードワンさんのご協力を得て、シリンダーと共にH2の実車も展示することができました。この車両もなんと国内物の素晴らしい車両でした。

iB Lady 多井子さんとH2車両が一緒の展示はお堅い工作機械の展示場の中では異彩を放ち、多くの観客の方に大好評をいただいたことは言うまでもありません。
シリンダーは削り出し用の3DモデルをiBが提供し、3Dプリント技術によって造形していただき、iBで上下面・IN/EXポートなどの仕上げをした上で、iB得意のICBM® によって内径仕上げをおこなってシリンダーとして完成させたものです。
金属3Dプリンターの技術は今世界中で大きな注目を集めており、今回の展示会でも南館の大きなスペースを各社の3Dプリンターの展示が占めていました。
3Dプリンター技術とiBの内燃機技術は実に良い組み合わせと言えると思います。3DプリンターではiB得意の削り出し技術に比べても、データさえあればはるかに短納期で造形をすることが可能です。ただ、それだけでエンジン部品として完成するというわけではなく、たとえば今回のシリンダーでは内径メッキやダイアモンド砥石によるメッキ後ホーニングなどの仕上げ技術が必須となります。もしこれからシリンダーヘッドやクランクシャフトなど他のエンジン部品に取り組むことになっても、エンジン部品の仕上げ技術というのはかならず付いて回ります。その時こそ70周年を超えるiBの内燃機技術が大いに役立つと言うわけなんです。
会場で最終日に撮影した動画です。
iBには削り出しの技術があるとは言え、3Dプリンターの造形には勝てない部分もあります。特に短納期での対応では太刀打ちできません。その3D造形技術とiBの内燃機部品の仕上げ技術の組み合わせは、またと無い貴重なコラボレーションになっていくと期待しています。

そして、12月には筑波サーキットで実装テストも実施しました。
元2ストロークマガジン編集長後藤武さんがTOT・LOCなどのレースに参戦されている車両に組み込み、サーキットを全力で疾走してもらいました。
筑波サーキットで3Dプリンターで作ったシリンダーテスト!!
強度は大丈夫なの?なんて言う人がいますが、ご心配要りません。
アルミ鋳物よりは強度も放熱性も優れています。
おまけに内径はICBM® (アルミメッキ化スリーブ)
非のうちどころがありません。


走行テストは20分を3回、全開走行して行われました。もちろんシリンダーはびくともしません。現在はまたシリンダーは車体から取り外してiB社内にありますが、内径を念のために測定しても、なんらの変形や摩耗も見られませんでした。

それにしてもiBはなぜ、こんなことに挑戦するのでしょうか。
僕がいつも引き合いに出すのが、愛車BULTACO SherpaTのパーツのことです。ブルタコはスペイン製でメーカー自体がもう30年くらい前に潰れてしまっています。ですから「オートバイの製造メーカーが部品を供給してくれる」などということは一切期待できません。ところがこのバイクの部品がアメリカやイギリスにメールを書くと一週間もあればなんでも揃うんです。ピストンのみならずガスケット類やら車体まわりの部品までなんでも揃います。おまけにTシャツやキャップなどのノベルティーまで。(笑)どういうことかというと、ブルタコ専門のパーツ商社のようなショップがあって、車体も扱いますがそれ以上にパーツ供給に熱心なんです。ピストンや燃料タンクや車体のゴム部品などは新規に製作し、クランクケースやキャブレターなどの大物部品は廃車や程度の悪い車体から良い部品だけを集めて、整理して保存していてくれるんです。そして、世界中からのオーダーに応えてどんな部品でも供給してくれます。
日本では「メーカーが部品供給が悪いから維持できない」などとメーカーに文句を言ってそれでおしまいですが、さすがに欧米のバイク文化は底が深い。こういうところにまだまだ差があるなあ、と思ってしまいます。

考えてみてください。もともとメーカーは何もないところからオートバイを作って販売していたのです。部品がなければ作ればいいではないですか。「そうは言っても、、、、。」という声が聞こえてきそうです。確かに簡単なことではありません。資本の大きさが違いますからね。でも、ここで僕たちが諦めてしまえば、20世紀の機械遺産と僕らが呼んでいる僕らが愛する素晴らしい旧いオートバイ達が、22世紀には存続しなくなってしまいます。今、僕らが頑張らなくてはいけないんです。無くなってからでは遅いんです。
欧米のバイク好き(業者もエンドユーザーも含め)に日本人が負けてはいけないと思います。
欧米人に負けないように日本人も日本のオートバイについては世界の誰よりも上手に綺麗に直して、自慢してやりたいと思うんです。日本人なら、必ずできますよね?ぼくらは世界の誰よりもオートバイが好きですよね?イギリス人にもドイツ人にもイタリア人にもアメリカ人にも負ける気なんてありませんよね?
つまり無いものは作ってでも維持していこう!と言うことなんです。
そうして、20世紀の機械遺産であるヴィンテージバイク、マッハ750(H2)のような名車をなんとしても未来に残していきたい。
それこそが僕たちiB(株)井上ボーリングと言う会社が存在する意義だと思うんです。
さあ、エンジン機能部品を金属3Dプリンターで製作することに、もう技術的な問題は何一つありません。
ぜひ、このことを覚えておいていただいて、何か必要な部品があるときにはiB (株)井上ボーリングにご相談をいただけるようになればと思っています。
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