2024.10.17
【SDRでソロツーリング】
text & photos : Sotaro Inoue (President of iB)
iBの仕事が仮にいかにすばらしいものだとしても、もし旧いオートバイが人を幸せにするような素敵なものでないとしたらiBの仕事に意味を見つけるのは難しいことになります。
ですが、旧いオートバイは本当にあらゆる点で素晴らしいものです。 その旧いバイクの素晴らしさを伝えることはiBの仕事の重要な一部だ、と考えています。
今回はある平日に思い立ってYAMAHA SDR200に乗って川越のiBから走り出してみました。SDRは極めて軽量・スリムな2ストローク単気筒のオートバイで、絶対的な速さではなくその走りの軽快さと操ることの気持ちよさで乗る者を歓喜でいっぱいにしてくれる稀有なオートバイです。
走り出してすぐにライダーを虜にしてしまうのが、その2ストエンジンの面白さ・痛快さです。2ストロークは現在では公道車としてはごく一部を除いて作られていません。こういうオートバイを選べるのが、旧いオートバイを選ぶ楽しみの一つであることは間違いありません。
しばらく2スト車に乗っていない方や、乗ったことのない方の中には2ストロークエンジンの面白さを認識していない方もいるのではありませんか?今回は改めてSDRに乗るたびに感じる2ストロークエンジンの面白さを噛みしめてみたいと思います。
サーキットではスロットル全開の加速と、フルブレーキングを繰り返すような乗り方になりますよね。一方、一般公道では全開にする必要があることなどほとんどありません。むしろ、ほぼ一定の速度を維持して走っていく時間がほとんどです。
ところが、2ストロークのマシンは意外にこのハーススロットル、特にスロットルをやや閉じ気味で走っていくことが苦手です。SDRも例に漏れません。ハーフスロットルだとエンジンがボコボコ言ってしまって、スムーズではないんです。全開とまでいかなくてもスロットルを開いていれば、ご機嫌な加速を感じさせてくれますし、スムーズに回っていきます。
2ストロークのエンジンがゾーンに入った時の胸の空くような加速には誰でも夢中になってしまうでしょう。
このエンジンが一定速を嫌って、加速することを好んでいるような印象。これが2ストロークのエンジンの特徴だと思います。「ほら!中途半端にスロットルを開けてないで、思い切ってビーンって加速しようよ!」エンジンがそう言っているようにさえ感じられます。
もう少し2ストエンジンの感触を文章にしてみます。
公道で信号が青に変わってスピードを上げていくときにもこんなふうに感じられます。周囲の流れに合わせて加速していく分には、スロットルを大きく開く必要などありません。おそらく全開の1/8位開いて1速から2速へ、3速へと加速していくんですが、このとき右手はほとんど全閉と1/8の間で手首をわずかに動かしているだけです。
1/8開いた手首をそのまま固定しているのに、エンジンは勝手におとなしめの加速からだんだん加速度を上げて、パワーゾーンに入ると勝手に急加速していきます。その時もまだ手首は少しも動かしていません。エンジンが勝手にどんどん加速していってしまうので、ほどほどの回転数まで上がったらクラッチを切ってシフトアップ、また1/8スロットルへ。この少しの繰り返しだけで、十分以上に流れをリードして走っていってしまうんです。
これもまた自分以上に「バイクが走りたがっている」という印象をライダーに与えます。
つまり、同じスロットル開度にライダーがしているのに、自然とエンジンが回りたがり、回転が上がるほどにさらに強く加速し、もっと速く走ろうとする、自分で勝手に加速していくような感じが2ストロークエンジンです。
さらに、こうしてある程度エンジンが加速しているときに、流れに対して少し速すぎるとライダーが感じて、それまでよりもスロットルをやや閉じているのに、そこでパワーゾーンに入っているとエンジンはさらに加速しようとすることさえあります。
自分が少し速度を落とそうとしているのに、エンジンがもっと回ろうとするんですよ!
こうなると「走りたがっているのは自分ではなく、バイクだ!」とさえ感じてしまいます。
このエンジンが回りたがる性質、これが2ストロークエンジンの魅力だろうと僕は思います。絶対値として速いかどうかということではありません。スロットル開度と出力がリニアな関係ではなく、その時のエンジンの回転数次第で、結果としてのパワーがさまざまに変化する、ということの面白さです。ただ、これは機械としてどうなのか、というと通常はあまり優れた特質とは言えないのかもしれません。指示した通りの出力を発揮してくれる方が機械としては正しいのかもしれません。
4ストロークエンジンは概ねそのような傾向があると思います。高回転で回した方が出力が上がるとはいえ、その関係は比例的というか予想通りの結果が得られて驚きはありません。
言ってみれば、4ストロークは温厚で従順で信頼できる真面目な親友のようなものかもしれません。安定しています。
一方、2ストロークは才能があってとてつもなく魅力的なんだけれど、どこか気まぐれで厄介な恋人のようにも感じられます。
長距離のツーリングには信頼でき疲れない4ストローク、近場での刺激的な気分転換には2ストロークが向いているかなあ、などと自分は思います。
マスツーリングに2ストで行くと、4スト乗りに排気に混じる煙を嫌われて「一番後ろを走ってくれない?」なんて言われてしまいますしね。
ハーフスロットルではガクガク
加速しているとゴキゲン
こんな気まぐれで魅力的な2ストロークエンジンのオートバイも新車ではほぼ手に入らないので、2ストを楽しみたければ旧いオートバイの中から選ぶことになりますよね。こんな選択の幅の大きさを楽しめるのも、旧いオートバイならではの楽しみ方ではないかと思います。
2ストロークだけではありませんが、現代の優等生のオートバイでは味わえない、個性が尖っていて手に負えないほどの魅力がある旧いオートバイというのはとても魅力的な世界であるように僕には思えます。
ぜひ、多くのかたにこの愉しさを安心して味わっていただきたいと思います。
ICBM®・EVER SLEEVE® pat. (圧倒的な耐摩耗性を誇るアルミメッキスリーブ)やLABIRY®(非接触式・金属製で摩耗ゼロ・パワーロスゼロのセンターシール)はまさにこのような目的で開発された技術・製品です。
末長く良い状態で旧いエンジンを愉しんでいただくためには欠くことができないものになっています。
20世紀の機械遺産、旧いオートバイをお客様と共に未来に残していきたい。
愛するオートバイに最高の技術を投入したいとお考えのオーナー様にぜひiBのオンリーワンの技術をご採用いただきたいと考えています。
ふらりと川越の工場を抜け出して、曇り空の下を南へと走り抜けて、着いた先は湘南の海でした。
別に飛ばすわけでもなく、こんな考え事をしながらオートバイで走ることは、僕の人生の中で欠くことができない貴重な時間だ、と走るたびに思わされます。
ICBM® のお求めはこちらから。
Yahooショッピング
海外からも Shopifyからお求めいただけるようになりました。
Shopify
text & photos : Sotaro Inoue (President of iB)
iBの仕事が仮にいかにすばらしいものだとしても、もし旧いオートバイが人を幸せにするような素敵なものでないとしたらiBの仕事に意味を見つけるのは難しいことになります。
ですが、旧いオートバイは本当にあらゆる点で素晴らしいものです。 その旧いバイクの素晴らしさを伝えることはiBの仕事の重要な一部だ、と考えています。
今回はある平日に思い立ってYAMAHA SDR200に乗って川越のiBから走り出してみました。SDRは極めて軽量・スリムな2ストローク単気筒のオートバイで、絶対的な速さではなくその走りの軽快さと操ることの気持ちよさで乗る者を歓喜でいっぱいにしてくれる稀有なオートバイです。
走り出してすぐにライダーを虜にしてしまうのが、その2ストエンジンの面白さ・痛快さです。2ストロークは現在では公道車としてはごく一部を除いて作られていません。こういうオートバイを選べるのが、旧いオートバイを選ぶ楽しみの一つであることは間違いありません。
しばらく2スト車に乗っていない方や、乗ったことのない方の中には2ストロークエンジンの面白さを認識していない方もいるのではありませんか?今回は改めてSDRに乗るたびに感じる2ストロークエンジンの面白さを噛みしめてみたいと思います。
サーキットではスロットル全開の加速と、フルブレーキングを繰り返すような乗り方になりますよね。一方、一般公道では全開にする必要があることなどほとんどありません。むしろ、ほぼ一定の速度を維持して走っていく時間がほとんどです。
ところが、2ストロークのマシンは意外にこのハーススロットル、特にスロットルをやや閉じ気味で走っていくことが苦手です。SDRも例に漏れません。ハーフスロットルだとエンジンがボコボコ言ってしまって、スムーズではないんです。全開とまでいかなくてもスロットルを開いていれば、ご機嫌な加速を感じさせてくれますし、スムーズに回っていきます。
2ストロークのエンジンがゾーンに入った時の胸の空くような加速には誰でも夢中になってしまうでしょう。
このエンジンが一定速を嫌って、加速することを好んでいるような印象。これが2ストロークのエンジンの特徴だと思います。「ほら!中途半端にスロットルを開けてないで、思い切ってビーンって加速しようよ!」エンジンがそう言っているようにさえ感じられます。
もう少し2ストエンジンの感触を文章にしてみます。
公道で信号が青に変わってスピードを上げていくときにもこんなふうに感じられます。周囲の流れに合わせて加速していく分には、スロットルを大きく開く必要などありません。おそらく全開の1/8位開いて1速から2速へ、3速へと加速していくんですが、このとき右手はほとんど全閉と1/8の間で手首をわずかに動かしているだけです。
1/8開いた手首をそのまま固定しているのに、エンジンは勝手におとなしめの加速からだんだん加速度を上げて、パワーゾーンに入ると勝手に急加速していきます。その時もまだ手首は少しも動かしていません。エンジンが勝手にどんどん加速していってしまうので、ほどほどの回転数まで上がったらクラッチを切ってシフトアップ、また1/8スロットルへ。この少しの繰り返しだけで、十分以上に流れをリードして走っていってしまうんです。
これもまた自分以上に「バイクが走りたがっている」という印象をライダーに与えます。
つまり、同じスロットル開度にライダーがしているのに、自然とエンジンが回りたがり、回転が上がるほどにさらに強く加速し、もっと速く走ろうとする、自分で勝手に加速していくような感じが2ストロークエンジンです。
さらに、こうしてある程度エンジンが加速しているときに、流れに対して少し速すぎるとライダーが感じて、それまでよりもスロットルをやや閉じているのに、そこでパワーゾーンに入っているとエンジンはさらに加速しようとすることさえあります。
自分が少し速度を落とそうとしているのに、エンジンがもっと回ろうとするんですよ!
こうなると「走りたがっているのは自分ではなく、バイクだ!」とさえ感じてしまいます。
このエンジンが回りたがる性質、これが2ストロークエンジンの魅力だろうと僕は思います。絶対値として速いかどうかということではありません。スロットル開度と出力がリニアな関係ではなく、その時のエンジンの回転数次第で、結果としてのパワーがさまざまに変化する、ということの面白さです。ただ、これは機械としてどうなのか、というと通常はあまり優れた特質とは言えないのかもしれません。指示した通りの出力を発揮してくれる方が機械としては正しいのかもしれません。
4ストロークエンジンは概ねそのような傾向があると思います。高回転で回した方が出力が上がるとはいえ、その関係は比例的というか予想通りの結果が得られて驚きはありません。
言ってみれば、4ストロークは温厚で従順で信頼できる真面目な親友のようなものかもしれません。安定しています。
一方、2ストロークは才能があってとてつもなく魅力的なんだけれど、どこか気まぐれで厄介な恋人のようにも感じられます。
長距離のツーリングには信頼でき疲れない4ストローク、近場での刺激的な気分転換には2ストロークが向いているかなあ、などと自分は思います。
マスツーリングに2ストで行くと、4スト乗りに排気に混じる煙を嫌われて「一番後ろを走ってくれない?」なんて言われてしまいますしね。
ハーフスロットルではガクガク
加速しているとゴキゲン
こんな気まぐれで魅力的な2ストロークエンジンのオートバイも新車ではほぼ手に入らないので、2ストを楽しみたければ旧いオートバイの中から選ぶことになりますよね。こんな選択の幅の大きさを楽しめるのも、旧いオートバイならではの楽しみ方ではないかと思います。
2ストロークだけではありませんが、現代の優等生のオートバイでは味わえない、個性が尖っていて手に負えないほどの魅力がある旧いオートバイというのはとても魅力的な世界であるように僕には思えます。
ぜひ、多くのかたにこの愉しさを安心して味わっていただきたいと思います。
ICBM®・EVER SLEEVE® pat. (圧倒的な耐摩耗性を誇るアルミメッキスリーブ)やLABIRY®(非接触式・金属製で摩耗ゼロ・パワーロスゼロのセンターシール)はまさにこのような目的で開発された技術・製品です。
末長く良い状態で旧いエンジンを愉しんでいただくためには欠くことができないものになっています。
20世紀の機械遺産、旧いオートバイをお客様と共に未来に残していきたい。
愛するオートバイに最高の技術を投入したいとお考えのオーナー様にぜひiBのオンリーワンの技術をご採用いただきたいと考えています。
ふらりと川越の工場を抜け出して、曇り空の下を南へと走り抜けて、着いた先は湘南の海でした。
別に飛ばすわけでもなく、こんな考え事をしながらオートバイで走ることは、僕の人生の中で欠くことができない貴重な時間だ、と走るたびに思わされます。
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