【鹿島で、昔見た夢のような夏休みを過ごしました】
a precious moment with iB Lady RIHO @KASHIMA
text & movie: Sotaro Inoue (President of iB)
たった数日前のことなんですけれども、すでに何か遠い昔の夏休みのような感じがします。
常陸利根川が逆水門で遮られ、夏はほぼ流れのない日々が続く「鹿島」の水面。
ここは1978年に明治学院大学体育会モーターボート水上スキー部の僕たち同期が開拓した場所です。ジャンプ台を作り、スラロームコースを入れ、地元MGマリーン鹿島(株)様のご協力を得て宿舎を使えるようにし、それまで誰も滑るものがいなかった最高の水面を水上スキーができる理想のゲレンデとして整備しました。
以来、ここで全日本水上スキー選手権や全日本学生選手権(インカレ)も行われ、今でも学生連盟が関東で大会を実施できる唯一の水面として、幾多の名選手の活躍の舞台となってきています。
その後ここで(株)井上ボーリングスポーツ事業部「SOTARO’S Water Sports Services」として水上スキーとウェイクボードのトーイングサービスを14年間に渡り実施、6名の女子プロ選手や多くのアマチュア選手を産み、井上自身も1999~2001年の3年間日本代表としてウェイクボードの世界選手権に出場、最高位はベテランズクラスで2位を得ることができました。
「鹿島」はとても書き尽くすことができないほどの思い出があるロケーションで、それ以来「全ての夏のほとんどの週末」をここで過ごしてきました。
ウォータースポーツをする人の間ではマリーナの名称からか今でも「鹿島」と呼ばれていますが、本来ここは茨城県神栖市という地名です。茨城県の南東に突き出たこのあたりには実は鉄道が全く通っていません。ですから、ここに来る時点ですでにクルマかオートバイなどエンジンのついた乗り物のお世話になることが必須です。不思議な土地ですね。
そして、マリーナでボートを降ろして水面に浮かべ、走り出るのにもエンジンは欠かせませんよね。
今年2024年の8月14と15日、たった2日間だけですが、久しぶりに泊まりがけで鹿島に出かけてウォータースポーツを愉しむ夏休みを過ごすことにしました。かつて「SOTARO’s」所属プロだった満夕ちゃんと夫のケイジさん、iB LadyのRIHOさん、それに妻の尚子も一緒です。
それというのも、今年からiB Ladyの一員として活躍してもらっているRIHOさんは、ウェイクサーフィンがお得意。ウェイクボードも経験がある上、船舶免許まで持っている!ということなんです。もちろんiBの本業に関係の深い2輪についても大型免許まで持っていて、オフロードの走行経験もあるという信じられないような適性を持ったかたなんです。
まるで、iB Ladyになるために生まれてきたような人だ、と言ってもいいのではないでしょうか。(笑)
僕が大学で水上スキーをやることになったのは本当に偶然なんですが、それにしても大学のクラブ活動でエンジンを使うスポーツなんて滅多にありません。それから僕は本当にエンジンに縁が深い人生を歩むことになりました。オートバイも水上スポーツも趣味も仕事も全てエンジン、という生き方になってしまいました。
オートバイと水上スポーツはエンジンを使う、ということだけが共通点ではなく、速度が生み出す儚い世界にのみ実在するものだ、という点も似ています。つまり、止まれば倒れてしまうんです。エンジンの力で疾走っている間だけ成立するまぼろしのようなあえかな世界。
2日間、たっぷりと水の上で愉しく過ごしたんですが、せっかく美しいモデルのRIHOさんをお招きしたので、どこかのタイミングで鹿島を美しく撮ってみたいと考えていました。それには夕暮れか夜明けが一番ふさわしい。そう思って狙っていたんですが、初日の夕暮れはちょうど日が没する方向にひとつ大きな雲があって、あまり色づくこともなく暮れてしまいました。
そこで、僕はRIHOさんに無理を言うことにしました。翌日の早朝に撮影のために早起きして欲しい、ということです。夏の夜明けは早いです。夏至からはだいぶ経った8月半ばでも、5:00には日の出を迎えます。そこで4:30にホテルのロビーで、ということにしました。女子は準備がたいへんです。なんと3:40起床でRIHOさんは付き合ってくれました。他のメンバーには流石に申し訳ないので、この早朝はRIHOさんと僕の二人だけです。
夜明けの空はぼんやりとして、星も見えてはいませんでした。でもホテルから20分、徐々に明るくなる日の出と競争でマリーナへと誰もいない川沿いの道を走ります。
マリーナに着くと、もう水上スキー部の学生たちが準備をしているのを見てRIHOさんが驚きます。水上スキーヤーにとっては4:00起きは当たり前のことなんです。
そして、クルマを停め、河の土手を超えて目に入ってきた光景は、ここしばらく見たこともなかったような鏡のような水面と朝焼けの空でした!ピンク色に染まる入道雲を水面が映しています。なんという朝だ。
すぐにボートの準備をして学生に一言「悪いけど先に行かせてくれ」と断りを入れて、一番に鏡の水面にボートを出させてもらいました。
ここから後の水の上のパラダイスでの様子はどうぞ動画と写真で確かめてみてください。
そして、RIHOさんにボートのドライビング・ウェイクボード・ウェイクサーフィン・ボートの上での撮影モデルまで務めてもらったその約1時間後には、全く空気が止まっていた水面にわずかですが風が出てグラスだった水面は漣立ち、あの夢のような水の上のパラダイスの風景は日の出後のいっときのピンク色に染まった雲と一緒にどこかへ消えてしまいました。そして、連日の茹だるような夏の日が始まります。
今回の撮影は本当に奇跡のような好条件で実現したものです。また、普通これだけの撮影をするにはスタッフが10人くらいは必要なのではないでしょうか。ボートオーナー・ボートドライバー・カメラマン・カメラ助手・水着のモデルさん・ウェイクボードが滑れるモデルさん・ウェイクサーフィンができるモデルさん・メイクさん・ヘアメイクさん・スタイリストさんなど。
それをたった二人だけでこなしてしまいました!なんてコスパがいいんでしょう。(笑)
それにしても奇跡的に最高の条件が揃った撮影でした。
あの一瞬、遥か鹿島の水上に現れた幻のようなパラダイスへは、エンジンがないとたどり着くことができません。ほんとによくあんな撮影ができたものです。
あれは、、、あのまぼろしのような夏の朝は、、永くエンジンに携わり続けた僕へのご褒美だったんでしょうか。