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バイクを愛してしまったら、手入れしてあげたくなるのは自然なこと。

 
 
2019.05.05

ようこそ、iBもイチオシのチキチキVMX猛レースへ

世代を越えた旧車遊びの楽しみ

 
 

【特別寄稿】
写真・文/高橋絵里(Office Camelin

  201955日、『チキチキVMX猛レース 16』が埼玉県のモトクロスヴィレッジで盛大に開催された。
 
大小のビンテージバイクを持ち寄って土まみれで駆け回るという、エントラントは全国から 200台を軽く越え、今や関東エリアはもちろん日本最大級のVMXイベントとして定着、成長し続ける個性的なイベントだ。
 
希少な旧車が大挙して走りまわるため、観戦を楽しみにする人も多く、この日だけは会場全体が昭和の時代に巻き戻され、クラシカルかつノスタルジックな雰囲気に満ちあふれる。
 
60歳代、 70歳代、そして華やかなレースシーンで活躍したレジェンドライダーたちが往時を懐かしみながら走り、一方では平成生まれの若いエントラントたちがビンテージマシンに魅かれて集まる。老若男女、家族連れや親子参加など年齢層がとても幅広い。
 

 
このイベントを主催運営するのが奈良県にあるVMXワークスショップ『ホーリーエクイップ』。
 
昭和 35年生まれの堀口社長(みな親しみを込めてホーリーさんと呼ぶ)が「古き良き時代の草レース、スクランブル、モトクロスシーンを皆で再現し、ビンテージな雰囲気を楽しみましょう」と提案する通り、一応レース形式ではあっても、タイムを競うには不利な旧式のマシンばかりゆえ、実際は運動会のような、レストア後のお披露目会のような、実にほのぼのとして、博物館級の希少車が走りまわる光景はときに優雅でさえある。
 
そんなチキチキVMXを井上ボーリングは応援している。「古くて動かなくなったモトクロッサーでもVMXがあることによって使い道ができる、とりあえず動くようになったよーくらいで参加できる、とても気軽でハードルが低いんですね。古いバイクなんだから速くなくてもいいんじゃないの?っていう感覚もあったり、それでも一応 1位だ 2位だって遊べて、本当に面白いですね。」
 
 

中央がチキチキVMX猛レースを主宰運営するホーリーエクイップ堀口雅史社長。
iB Ladyはイベントマスコット、表彰プレゼンターとして活躍。
 

マシンの年式と仕様による細かいクラス分けとユニークなクラス名。レース順がわかりやすい進行ボードも可愛らしい。
 

かつてセニアや国際A級で活躍したゲストレジェンドの皆さん、現役時代を彷彿とさせる懐かしい走りを披露してくれる。数十年を経ても皆さん圧巻に速いので表彰は賞典外(笑)。
 
 井上社長の愛車はブルタコPURSANG MK8。 1974年型で排気量は 250cc、スペインの銘車だ。「ブルタコらしくバリーン!と伸びていく2ストロークならではのエンジンの弾け方がとてもいい。まだシート高もそれほど高くなかった時代なので乗りやすいし。ただし、フットペダルが左ブレーキ、右チェンジなんですね(笑)。」と、PURSANGの個性を愛でる井上社長。「当時ヨーロッパのレースで初めて優勝したアメリカ人ライダー、ジム・ポメロイが乗っていたのと同じモデルなんです。」とも、かくして銘車は時代を越え国を越えて乗り継がれてゆく。
 この日、愛車で『WGP~ '76クラス』を午前と午後の 2ヒート走った井上社長は、 3位/ 4位で総合 4位を獲得、みごと表彰台登壇を果たした。
「走るのは実に 1年ぶりだったし、朝の練習走行では路面も濡れていて怖くて仕方がなかったけれど、午前の1ヒートめが終わるころには楽しくなってきて、午後の2ヒートめはすごく楽しく走りました。前を走るマシンを絶対追い抜こうと思って頑張ったり。」
 井上社長は本当に全身から楽しさを発散させながら走る。写真を撮っているとわかるのだが、井上社長は走っていても瞬きをしない。そのことを伝えたら「ホントですか?ボクサーみたい!」とちょっと嬉しそうだ。それに、いつも笑いながら走っている。ジャンプの瞬間も確かに笑っている。「そりゃジャンプが一番楽しいもの!」と言うが、終始笑顔でレースするライダーは実際なかなかいない、井上社長のココロの余裕だろうか。
 

明るいブルーがスペインの空を思わせる、愛車ブルタコ PURSANG MK8
 

ジャンプが大好きな井上社長。絶対に笑顔で走るし、瞬きしない。
 

45年前のマシンながら好調、 PURSANGの迫力ある加速感を味わう。
 

  総合 4 位獲得。順位は二の次だが表彰台はやっぱり嬉しい。
 
 数年前、この愛車ブルタコがエンジン不調になった。チキチキVMXの関東エリア初開催を機に、井上社長はみずから奈良県のホーリーエクイップにブルタコを持ち込んだ。
 
もちろんそれまでも、かつての DIRT A.C.T.S.UNION VMXミーティング会場で互いに見知ってはいたが、「一度ホーリーさんとゆっくり話したかったし仕事場も見てみたかった。
当時ウチがやっていたネットTVで取材する!という形で奈良へ行ったんです。」そうして、ホーリーエクイップはエンジンを全バラしてメッキシリンダーを組み込み、調整しながら組み上げレストア作業を終えると、今度はホーリーさんがブルタコを納車に井上ボーリングを訪ねたのだった。
 
「で、マシンを見たホーリーさんが、 "せめてこのシートだけはキレイにさせてほしい "とか、 "ここもちょっと磨いてブルタコの文字入れていいかな "とか言うんですよ。
了解をいただければやるだけのことはやりたいという情熱、マジメで几帳面で、きちっと頑張る体育会系な方ですね。
ふざけていてもギャグ言ってても絶対に根はマジメ、そういうお人柄ですね」以来、互いをリスペクトし合い、刺激し合える間柄。ブルタコもすっかり好調をキープして今日に至る。
 
 かつてホーリーさんは選手権ライダーで、 80年代に全日本モトクロス国際B級を走った人だ。心の奥底に刻まれたコンペティティブ精神は健在、今も走れば相当速い。チキチキではマイクを持って運営に徹するホーリーさんも、他イベントで参加側にまわると鮮やかなトップ走行を見せてくれる、文武両道の走るレストア・クラフトマン。
 
だからこそチキチキVMXを絶妙に盛り上げることができるのだろう。さて、次回のチキチキVMX猛レースは 113日、モトクロスヴィレッジで開催。タイムスリップな再現シーンの数々を今から楽しみにしよう。
 

ホーリーエクイップ堀口社長、実は昔取ったキネヅカライダー。
526日の『ジャパンVET』(ベテランモトクロスの祭典)ではビンテージクラスで久々のライドを見せてくれた。 1979年型 CR250Rに無限スイングアーム当時物、ワークスパフォーマンスショック+ 1980年式サイドパネルでカスタムという丹精込めたマシン。
変わったデザインのブーツは当時アメリカスーパークロスで流行したSCOTT社プラスチックブーツと細部までこだわった。
 
  • チキチキVMXの詳細はホーリーエクイップ公式サイトをご覧ください。

https://www.hollyequip.com/